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GPSの解説

電離層の日変化はGPS精度にどう影響するか

電離層の各層は昼と夜で変化します。GPSにとって重要なのは、信号が通過する自由電子の量と、その分布の不均一さです。

動画:GPS信号を宇宙から地上まで追いかけ、電離層が信号をどう遅らせるか、そして2周波受信機や補正モデルが誤差をどう減らすかを示す75秒のアニメーション解説(英語)。YouTubeで見る。

要点:電離層は地上およそ60~500 kmに広がっています。日中はD、E、F領域がありますが、夜になるとD領域は消え、E領域は弱まり、主にF層だけが残ります。こうした変化によって、GPS信号が届くまでの時間が変わります。誤差の大きさを主に決めるのは、信号経路に沿った全電子数です。GPSのL1周波数では、補正前で1 m未満から数十mになります。夜間は一般に遅延が小さくなりますが、赤道付近では日没後にF層が上昇し、プラズマバブルに分裂して受信を妨げることがあります。

電離層の日変化はGPS精度にどう影響するか
電離層は大気の他の領域と重なっています。電子密度や境界は変化するため、この図は概要を示したものであり、現在の状況を表す地図ではありません。

電離層の高度は昼と夜でどう変わるか

電離層は、太陽放射によって原子から電子がはぎ取られ、自由電子とイオンが存在する超高層大気の領域です。地上約60~70 kmから始まり、約500 kmまで広がることがあります。UCARの電離層ガイドで各層を解説しています。

各電離層領域のおおよその高度
領域おおよその高度日中夜間
D60–90 kmあり消える
E90–150 kmあり大きく弱まる
F150–500 kmF1層とF2層に分かれることが多い単一のF層が残る

日没後に下層の領域が消えていくと、残る電離は主にF層の高い位置に集まります。境界は緯度、季節、太陽活動によって変わるため、これらの数値は典型的な範囲であり、固定された境界ではありません。

高度だけでGPSの誤差が決まらない理由

GPS衛星は高度約20,200 kmを周回しているため、すべてのGPS信号は電離層全体を通過します。層の高さが変えるのは幾何学的な条件、つまり斜めに進む信号がもっとも密度の高い部分をどこで横切り、その部分をどれだけの距離進むかです。層が高いからといって、誤差が大きくなるとは限りません。

より有用な指標が全電子数(TEC)です。これは信号経路に沿った断面積1平方メートルの柱に含まれる電子の数です。単位はTECユニットで、1 TECUは1平方メートルあたり10¹⁶個の電子に相当します。鉛直方向のTECは、地方時、緯度、季節、太陽活動、地磁気の状態によって、数TECUから数百TECUまで変化します。NOAAのTEC解説でこれらの要因を説明しています。

GPSのL1周波数(1575.42 MHz)では、1 TECUあたり約0.16 mの遅延が生じます。そのため鉛直経路だけでも、補正前で1 m未満から数十mの距離誤差が加わることがあります。

1日の中で何が変わるのか

日中は太陽光によって電離が進みます。日没後は電子とイオンが再結合して電子密度が下がりますが、電離層が消えるわけではありません。下の表は一般的な傾向を示したもので、特定の場所のGPS精度を予測するための時刻表ではありません。

典型的な日変化とGPSへの影響
地方時電離層の変化考えられるGPSへの影響
朝から午後の早い時間太陽放射によって自由電子が増え、電子量は午後のピークに向けて増加します。補正前の遅延が大きくなります。GPSの放送補正モデルでは、1日のピークを地方時14時としています。
日没後全体の電離は減少します。磁気赤道付近では、F層が上昇して不安定になることがあります。平均遅延が減っても、信号の急激な変動によって追尾が途切れることがあります。
夜間電子密度は低く、主にF層が残ります。遅延は通常もっとも小さくなります。放送される補正モデルでは、夜間の値を一定の5 ns(約1.5 m)としています。
擾乱時(時刻を問わない)宇宙天気によって通常のパターンが崩れることがあります。誤差が数十mに達し、受信機がロックを失うことがあります。

赤道域F層の夕方の上昇

電離層の高度変化がGPSを直接悪化させるもっとも明確な例は、磁気赤道付近の日没直後に見られます。そこでは、東向きの電場が一時的に強まる「プレリバーサル・エンハンスメント」によってF層が押し上げられます。その高度では中性大気との衝突が少なく、層の下部が不安定になることがあります。その結果生じるのがプラズマバブルで、この電子密度の低い領域がGPS信号のシンチレーションを引き起こします。

プラズマバブルは通常、地方時の19時ごろに発生し始め、21時から22時ごろにもっとも多くなります。Kepkarら(2020)が衛星データからこの傾向を報告しています。

誰にでも当てはまる「GPSに最適な時間帯」はありません。「夜間のGPSは常に良好」という単純なルールでは、この夕方の現象を見落とします。NOAAは、赤道域の不安定性が日没直後にもっとも激しくなると指摘しています。

電離層がGPSの測定に与える影響

1. 信号が弱くなくても生じる距離誤差

GPSは信号の到達時間から距離を推定します。電離層は測距コードを遅らせるため、補正しないと衛星までの距離が実際より長く見えます。搬送波位相の測定には、1次の効果として逆向きの影響、つまり位相の進みが生じます。そのため、受信機が強い信号を示していても、測定値には補正が必要な場合があります。

1次のコード遅延はTECに比例して大きくなり、信号周波数の2乗に反比例して小さくなります。この周波数依存性があるため、2周波受信機は影響の大部分を推定して除去できます。ESA Navipediaが電離層遅延を解説しています。

2. 急激な変動と追尾の喪失

電子密度の小さく不均一な塊があると、シンチレーションが起こります。これは信号の強さと位相が急激に変化する現象です。強いシンチレーションでは、受信機が衛星へのロックを失い、位置の更新が途切れることがあります。中緯度よりも低緯度と高緯度で多く発生します。NOAAのシンチレーション解説では、この乱れをなめらかな遅延と区別しています。

3. 地平線近くでは経路が長くなる

地平線近くにある衛星の信号は、電離層の中を斜めに長い経路で通過します。放送される補正モデルでは、仰角5°の衛星が受ける遅延は天頂の衛星の約3倍です。そのため同じ電離層でも衛星ごとに影響の大きさが異なり、結果として生じる位置誤差は空における衛星の配置にも左右されます。

GPSの誤差を減らすには

  • 放送される補正モデル。1周波のGPS受信機は、衛星が放送する係数を使ってKlobucharモデルを適用できます。このモデルは平均して電離層による距離誤差の約半分(全世界のRMS)を除去しますが、個々の測位ではそれより良い場合も悪い場合もあります。ESAがモデルとその限界を解説しています。
  • 2周波測定。遅延は周波数に依存するため、2つの周波数を組み合わせると1次の項を除去できます。これは電離層の影響の99.9%以上にあたります。ただし、強いシンチレーション中のロック喪失は防げません。
  • 利用できる衛星を増やす。複数の衛星システムを追尾すると、利用可能性と衛星配置が改善し、一部の衛星が低い位置にあったり一時的にロックを失ったりしたときに役立ちます。ただし、どの衛星システムの信号も電離層を通過するため、補正の代わりにはなりません。
  • 受信環境全体を確認する。アンテナが空を広く見渡せるようにし、取り付けの指示に従ってください。建物や地形、反射によって、宇宙天気とは無関係の問題が起きることもあります。
  • 精密な作業では状況を確認する。NOAAの宇宙天気情報と、使用中の衛星数など受信機の品質指標を確認してください。もっともらしい座標が表示されていても、それだけでは必要な精度を満たしているとは言えません。

Lokoでの追跡にとっての意味

トラッカーには2つの別々の役割があります。衛星信号から位置を計算することと、その位置をユーザーに届けることです。Lokoの受信機はGPS、GLONASS、Galileo、BeiDouの衛星を追尾するため、利用可能性と衛星配置が向上します。Lokoはその後、LoRa無線リンクで位置を送信します。このリンクは計算された位置をそのまま運ぶものであり、電離層による誤差を取り除いたり、欠けた衛星の測定を補ったりすることはできません。

赤道付近では、夕方から夜にかけて位置が時々途切れたり飛んだりすることがありますが、その原因はトラッカーや無線リンクではなくシンチレーションの場合があります。更新が届かない、または位置がおかしいと感じたら、衛星の受信状態とトラッカーから受信機までの無線経路の両方を確認してください。2つのリンクについては、当社のGPSとLoRaのガイドで説明しています。また、Lokoの仕様には対応する衛星システムが記載されています。

出典と参考資料