要点:アンテナは、交流の電気信号を電波に変換し、電波を電気信号に戻します。信号は金属内の電子を行き来させ、変化する電流と電荷が外側へ伝わる波を送り出します。ダイポールアンテナは中央から給電する2本のアームでこれを行い、モノポールアンテナは1本のエレメントとグランドプレーンと呼ばれる導体面を使います。
無線は魔法のように見えるかもしれません。小さな金属片が、受信機と何もつながっていないのに、谷の向こうまでエネルギーを送ります。しかし、その物理は電線の中を動く電子という単純なところから始まります。このガイドでは、その動きを一歩ずつ追いながら、ただの電線から実際に働くダイポールアンテナとモノポールアンテナへと進み、最後にアンテナが信号を受信する仕組みまで説明します。
まず電線から:電子は何をしているのか?
金属の電線には、もともと動くことができる電子がたくさんあります。銅では、原子1個あたりおよそ1個の電子が特定の原子に束縛されず、金属の中を自由に動き回れます。これらの電子を電池が供給する必要はありません。何かを接続する前から、すでにそこにあるのです。
電源を接続すると、電線に沿って電界が生じます。この電界がすべての自由電子を押し、電子は速いランダムな運動に加えて、そろって同じ方向へドリフトし始めます。
このドリフトは驚くほど遅く、毎秒1ミリメートルに満たないことも珍しくありません。それでもランプがほぼ瞬時に点灯するのは、電界が電子よりはるかに速く電線を伝わり、電線全体の電子がほぼ同時に動き始めるからです。
電子が行き来するのはなぜか?
電池は一方向に押します。無線送信機は違います。送信機が作る交流電圧は、なめらかに変化し、極性が反転し、それを繰り返します。
電線の一端がプラスになると、電子はそちらへ押されます。極性が反転すると電気の力も反転し、電子は逆方向へ向かいます。電子が電線に沿って実際に進んでいくことはありません。それぞれの場所の周りで行き来するだけです。
よく混乱を招く点が一つあります。電子は負の電荷を持つため、慣習的に電流と呼ぶ向きとは逆に動きます。この慣習は電子が知られる前に定まり、そのまま残りました。そのため、電流の矢印と電子の矢印は逆を向きます。
波を読む:グラフは実際に何を示しているのか?
無線信号は通常、正弦波として描かれます。正弦波は4つの基本用語で説明できます。
- 周期:パターンが1回完全に繰り返されること(サイクル)。
- 振幅:波がゼロからどこまで振れるか。
- 周波数:1秒あたりのサイクル数で、単位はヘルツです。868 MHzの無線信号は、1秒間に8億6800万回繰り返します。
- 位相:ある瞬間に波がサイクルのどこにいるか。
最も大切なのは、このグラフが電圧や電流などの量が時間とともにどう変化するかを示している点です。電子の物理的な通り道ではありません。電子が正弦波の形を描いて電線を進むわけではありません。
波を読むいちばん良い方法は、1周期を丸ごと追うことです。電流は電子全体の動きを直接表すので、ここでは電流を使います。個々の電子は速いランダムな運動も続けているため、以下の「動く」は全体としてのドリフトを意味します。慣習上の電流はこのドリフトと逆向きであることを思い出してください。グラフの番号を追ってみましょう。
- 左端。電子は左へいっぱいまで移動しています。全体としてのドリフトが一瞬止まるので、電流はゼロです。
- 右へ、最高速度で。電子は中央の位置を通過します。電流はピークで左向きなので、赤い曲線は最も低い位置にあります。
- 減速して右端へ。電子は反対側の端に達し、全体としてのドリフトが再び一瞬止まります。電流はゼロです。
- 左へ、最高速度で。電子は逆向きに中央を通過します。電流は右向きのピークになり、赤い曲線は最も高い位置にあります。
- 元の位置へ。電子は再び減速しながら左端へ戻り、次の周期が始まります。
位置と電流のピークは同時ではないことに注目してください。電子が中央から最も離れるのはちょうど電流がゼロのときで、電流が最も強くなるのは電子が中央を通過するときです。
この例は単純な抵抗線で、電圧は電流と同じタイミングで上下するため、電圧のグラフも同じタイミングになります。アンテナでは事情が異なります。電子はその場所の局所的な電界に反応し、電流と電荷はアンテナに沿って変化するので、電圧のグラフだけでは電流の正確なタイミングがわかるとは限りません。
移動距離もごくわずかです。一般的な無線周波数と電流では、往復のドリフトは原子よりはるかに小さいこともあります。
その動きはどのように電波を生むのか?
ここでは物理の3つの事実が組み合わさります。
- 電子は電界を持っています。あらゆる電荷は周囲に電界を持ち、それは周りの空間へ広がっています。
- 電流は磁界を生みます。動く電荷は電線の周りに磁界を作ります。
- 変化する場は互いを生み出します。変化する電界は磁界を生み、変化する磁界は電界を生みます。
一定の電流は一定の磁界を生み、その磁界は電線の周りにとどまるだけです。しかしアンテナでは、電流と電荷が1秒間に何百万回も向きを変えます。変化は有限の速さで伝わるため、アンテナ付近の場は瞬時には追従できません。変化する場の一部は、電界と磁界が互いを維持するパターンとして外側へ進み続けます。この進んでいくパターンが電磁波で、光の速さでエネルギーをアンテナから運び去ります。
電子は金属の中にとどまります。遠ざかっていくのは波だけです。
波にも独自のタイミングがあります。波は変化から生まれるので、波が運ぶ場は電流の変化の速さで決まります。電流が最も速く変化するのは電子が反転する瞬間で、そのとき電流自体はゼロです。その影響が伝わるには時間がかかるため、離れた地点には遅れて届きます。つまり、電子の位置、電流、外へ出る場のピークはすべて同時ではありません。
アンテナの長さが重要なのはなぜか?
波長(λと書くことが多い)は、波が1周期の間に進む距離です。電波は非常に速いですが、868 MHzでは1周期がきわめて短いため、次の周期が始まるまでに波が進む距離は約345 mmしかありません。
次に、アンテナに沿って進む信号を想像してください。先端に達すると金属が終わるので、信号は反射して戻ってきます。適切な長さでは、進む波と反射した波が組み合わさり、アンテナに沿って強い繰り返しの電流パターンを作ります。ちょうどよいタイミングでブランコを押すようなもので、送信機からの新しい押しが、すでに起きている動きに加わります。これが共振であり、信号のタイミングとアンテナの長さがかみ合う必要がある理由です。
特によく使われる長さは2つあります。半波長アンテナは、先端から先端までが波長の半分です。1/4波長アンテナは、波長の4分の1の長さのエレメント1本で、グランドプレーンと組み合わせて動作します。
考え方がわかれば、計算は簡単です。波長は光の速さを周波数で割った値なので、メートル単位の1/4波長はおよそ75をMHz単位の周波数で割った値になります。LoRaでよく使われる868 MHzでは約86 mm、915 MHzでは約82 mmです。
ダイポールアンテナ:協力して働く2本のアーム
ダイポールアンテナは、中央の信号源につながれた2本の導体のアームです。信号源は一方のアームへ電子を押し込みながら、もう一方から引き出し、その後これを反転させます。こうして電子はアームに沿って全体として同じ方向へ、一方へ、次に逆へと動き、電荷は繰り返し両端へ押しやられます。
一般的な半波長ダイポールでは、これが定在波と呼ばれる繰り返しのパターンに落ち着きます。
- 電流は中央付近で最も強く、先端に向かってゼロに近づきます。電子は金属の端を越えて流れられないからです。
- 電荷は両端付近にたまります。一方の先端がプラス、もう一方がマイナスになり、半周期ごとに入れ替わります。
その結果が、おなじみのドーナツ形の放射パターンです。ダイポールは横方向に最も強く放射し、両端の方向にはほとんど放射しません。
ダイポールが波を送り出す手順
電荷と電気力線を使うと、同じ過程を別の形でイメージできます。電気力線はプラスの電荷からマイナスの電荷へ向かうので、最初の半周期で線がどう変わるかを見てみましょう。
- 電荷が分かれ始めます。信号源が電子をアンテナの下方へ押します。上のアームにはプラスの電荷が残り、下のアームはマイナスの電荷を得ます。これは中央付近から始まり、短い電気力線がそれらをつなぎます。
- 場が広がります。電荷がアームに沿って広がるにつれ、電気力線も外側へ伸びます。場の変化は光の速さで伝わるので、遠くの空間にはまだ届いていません。
- 電荷がピークに達します。4分の1周期後、最も多くの電荷が先端付近にたまり、電子全体のドリフトが一瞬止まります。先ほど追った周期と同じく、電流はゼロです。
- 変化が外へ広がります。電子が向きを反転すると、アンテナの周りの電界と磁界が変化します。この変化は光の速さで外へ広がり、エネルギーを運び去ります。図の曲線は電界をイメージするためのもので、電線からちぎれて飛んでいく物理的なひもではありません。
次の半周期では電荷が逆向きにたまり、場の向きが逆になってパターンが繰り返されます。この電界と磁界の変化の繰り返しが外へ広がったものが電波です。
モノポールアンテナ:1本のエレメントとグランドプレーン
1/4波長モノポールは、波長の4分の1の長さの導体エレメント1本が、グランドプレーンと呼ばれる導体面と組み合わさって動作するアンテナです。信号はエレメントの根元とその面の間に給電します。名前とは裏腹に、グランドプレーンを大地に接続する必要はありません。
理想的な、平らで完全な導体のグランドプレーンを考えてみましょう。その表面の電荷がエレメントに応じて再配置され、面より上での効果は、面の下にアンテナの鏡像があるときとまったく同じになります。エレメント先端のプラス電荷には鏡像先端のマイナス電荷が対応し、鏡像の電流は対応する向きに流れます。エレメントと鏡像を合わせると、半波長ダイポールと同じ形になります。グランドプレーンが欠けた半分を電気的に補うのです。
つまり、理想的な1/4波長モノポールの放射パターンは、ダイポールのドーナツの上半分と一致します。
もちろん、実際のグランドプレーンは無限ではありません。車の屋根、放射状の線材、回路基板などがその役割を果たせますが、面が小さかったり不規則だったりすると、同調が変わり、パターンが傾くことがあります。鏡像モデルは出発点であり、すべての機器を正確に表すものではありません。
ダイポールとモノポール:簡単な比較
同じ周波数での2つの設計を並べて示します。
| 項目 | 半波長ダイポール | 1/4波長モノポール |
|---|---|---|
| 構造 | 導体のアーム2本 | エレメント1本と導体面 |
| 一般的な長さ | 約λ/2(868 MHzで≈ 173 mm) | 約λ/4(868 MHzで≈ 86 mm) |
| 給電点 | 中央、アームの間 | 根元、エレメントとグランドプレーンの間 |
| グランドプレーン | 不要 | 必要で、アンテナの一部 |
| 放射パターン | 完全なドーナツ形 | ドーナツの上半分(理想的な面) |
どちらかが常に優れているわけではありません。通常は、使えるスペース、取り付け面、機器を何に取り付けるかで選びます。
補足の技術メモ:インピーダンスと利得
理想的な場合、半波長ダイポールの給電インピーダンスは約73 Ω、利得は約2.15 dBiです。無限に広い完全導体のグランドプレーン上の理想的な1/4波長モノポールは、インピーダンスがその約半分の約36 Ω、利得は約5.15 dBiです。同じ電力が空間の半分に向かうためです。実際の設置でのピーク利得は、形状、損失、放射パターンによって決まります。
アンテナが信号を受信する仕組み
ここで話全体を逆にしてみましょう。電磁波が受信アンテナに届くと、その電界が金属内の自由電子を押します。電界が交互に変わるにつれて電子は行き来し、アンテナの給電点に小さな交流電圧と電流を生みます。受信機はその信号を増幅して復号します。
相反性と呼ばれる性質により、アンテナの放射パターンと利得は、送信時と受信時で一般に同じです。両端方向への送信が弱いダイポールは、その方向からの受信も弱くなります。
実際の例:トラッカーのモノポール
Loko GPSトラッカーはモノポールアンテナを使っているので、ここまでの内容がそのまま当てはまります。パターンは先端方向で最も弱いため、アンテナを相手の無線機にまっすぐ向けるより、垂直に保つほうが通常は良い結果になります。動作には導体面が必要で、近くの金属や人や動物の体は同調を変えたりエネルギーを吸収したりすることがあります。電波の見通し線や信号の到達距離のガイドで説明しているように、アンテナの配置は無線リンクの一要素にすぎません。
参考資料
- What's the difference between a dipole and a ground plane antenna? (Electronic Design)
- Understanding antenna specifications and operation, part 2 (DigiKey)
- Dipole antenna、Monopole antenna(Wikipedia、英語)