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アンテナの仕組み:動く電子から電波まで

アンテナの物理、ダイポール、モノポールを図でやさしく学ぶ入門ガイドです。

中央給電のダイポールアンテナから電波の波面が外側へ広がるイラスト

要点:アンテナは、交流の電気信号を電波に変換し、電波を電気信号に戻します。信号は金属内の電子を行き来させ、変化する電流と電荷が外側へ伝わる波を送り出します。ダイポールアンテナは中央から給電する2本のアームでこれを行い、モノポールアンテナは1本のエレメントとグランドプレーンと呼ばれる導体面を使います。

無線は魔法のように見えるかもしれません。小さな金属片が、受信機と何もつながっていないのに、谷の向こうまでエネルギーを送ります。しかし、その物理は電線の中を動く電子という単純なところから始まります。このガイドでは、その動きを一歩ずつ追いながら、ただの電線から実際に働くダイポールアンテナとモノポールアンテナへと進み、最後にアンテナが信号を受信する仕組みまで説明します。

まず電線から:電子は何をしているのか?

金属の電線には、もともと動くことができる電子がたくさんあります。銅では、原子1個あたりおよそ1個の電子が特定の原子に束縛されず、金属の中を自由に動き回れます。これらの電子を電池が供給する必要はありません。何かを接続する前から、すでにそこにあるのです。

電源を接続すると、電線に沿って電界が生じます。この電界がすべての自由電子を押し、電子は速いランダムな運動に加えて、そろって同じ方向へドリフトし始めます。

このドリフトは驚くほど遅く、毎秒1ミリメートルに満たないことも珍しくありません。それでもランプがほぼ瞬時に点灯するのは、電界が電子よりはるかに速く電線を伝わり、電線全体の電子がほぼ同時に動き始めるからです。

金属の電線の中をドリフトする電子固定された金属原子と自由電子で満たされた電線。電源が電界を作り、電子はプラス側へドリフトします。電源電子は+側へドリフトする電界
金属にはもともと自由電子(青)がたくさんあります。電源が電界を加えると、電子全体がプラス側へドリフトします。灰色の金属イオンはその場にとどまります。

電子が行き来するのはなぜか?

電池は一方向に押します。無線送信機は違います。送信機が作る交流電圧は、なめらかに変化し、極性が反転し、それを繰り返します。

電線の一端がプラスになると、電子はそちらへ押されます。極性が反転すると電気の力も反転し、電子は逆方向へ向かいます。電子が電線に沿って実際に進んでいくことはありません。それぞれの場所の周りで行き来するだけです。

よく混乱を招く点が一つあります。電子は負の電荷を持つため、慣習的に電流と呼ぶ向きとは逆に動きます。この慣習は電子が知られる前に定まり、そのまま残りました。そのため、電流の矢印と電子の矢印は逆を向きます。

交流電圧は電子の動きを反転させるつながった3つのパネル。交流電圧のグラフ、2つの時点での電線の極性、電子が一方へ動いてから逆へ動く様子を示す矢印です。1. 交流電圧AB時間2. 電線の両端の極性3. 電子の動きAの時点電子慣習上の電流Bの時点電子慣習上の電流
電圧が反転すると、電線の両端の極性が入れ替わり、電子の向きが変わります。慣習上の電流は、電子の動きと逆向きに描きます。

波を読む:グラフは実際に何を示しているのか?

無線信号は通常、正弦波として描かれます。正弦波は4つの基本用語で説明できます。

  • 周期:パターンが1回完全に繰り返されること(サイクル)。
  • 振幅:波がゼロからどこまで振れるか。
  • 周波数:1秒あたりのサイクル数で、単位はヘルツです。868 MHzの無線信号は、1秒間に8億6800万回繰り返します。
  • 位相:ある瞬間に波がサイクルのどこにいるか。

最も大切なのは、このグラフが電圧や電流などの量が時間とともにどう変化するかを示している点です。電子の物理的な通り道ではありません。電子が正弦波の形を描いて電線を進むわけではありません。

波を読むいちばん良い方法は、1周期を丸ごと追うことです。電流は電子全体の動きを直接表すので、ここでは電流を使います。個々の電子は速いランダムな運動も続けているため、以下の「動く」は全体としてのドリフトを意味します。慣習上の電流はこのドリフトと逆向きであることを思い出してください。グラフの番号を追ってみましょう。

電子の位置と電流の1周期2つのグラフが同じ時間軸を共有します。マーカーがグラフ上を動き、それに合わせて電線の中の電子が左右に動きます。電子の位置は電流がゼロのときに端に達し、電流は電子が中央を通るときにピークになります。電子の平均位置線より上 = 中央より右電流線より上 = 慣習上の電流が右向き12345マーカーに合わせて動く電線の中の電子
単純な抵抗線での1周期。番号は下の手順に対応します。グラフは時間に沿った値を示すもので、空間上の経路ではありません。動きは大幅に遅く、誇張して描いています。
  1. 左端。電子は左へいっぱいまで移動しています。全体としてのドリフトが一瞬止まるので、電流はゼロです。
  2. 右へ、最高速度で。電子は中央の位置を通過します。電流はピークで左向きなので、赤い曲線は最も低い位置にあります。
  3. 減速して右端へ。電子は反対側の端に達し、全体としてのドリフトが再び一瞬止まります。電流はゼロです。
  4. 左へ、最高速度で。電子は逆向きに中央を通過します。電流は右向きのピークになり、赤い曲線は最も高い位置にあります。
  5. 元の位置へ。電子は再び減速しながら左端へ戻り、次の周期が始まります。

位置と電流のピークは同時ではないことに注目してください。電子が中央から最も離れるのはちょうど電流がゼロのときで、電流が最も強くなるのは電子が中央を通過するときです。

この例は単純な抵抗線で、電圧は電流と同じタイミングで上下するため、電圧のグラフも同じタイミングになります。アンテナでは事情が異なります。電子はその場所の局所的な電界に反応し、電流と電荷はアンテナに沿って変化するので、電圧のグラフだけでは電流の正確なタイミングがわかるとは限りません。

移動距離もごくわずかです。一般的な無線周波数と電流では、往復のドリフトは原子よりはるかに小さいこともあります。

その動きはどのように電波を生むのか?

ここでは物理の3つの事実が組み合わさります。

  1. 電子は電界を持っています。あらゆる電荷は周囲に電界を持ち、それは周りの空間へ広がっています。
  2. 電流は磁界を生みます。動く電荷は電線の周りに磁界を作ります。
  3. 変化する場は互いを生み出します。変化する電界は磁界を生み、変化する磁界は電界を生みます。

一定の電流は一定の磁界を生み、その磁界は電線の周りにとどまるだけです。しかしアンテナでは、電流と電荷が1秒間に何百万回も向きを変えます。変化は有限の速さで伝わるため、アンテナ付近の場は瞬時には追従できません。変化する場の一部は、電界と磁界が互いを維持するパターンとして外側へ進み続けます。この進んでいくパターンが電磁波で、光の速さでエネルギーをアンテナから運び去ります。

電子は金属の中にとどまります。遠ざかっていくのは波だけです。

信号を電波に変えるアンテナ信号グラフが垂直アンテナを駆動します。電子は金属の中を上下に動き、電磁波は外側へ広がります。1. 信号2. 電子は金属の中で動く電子はアンテナから離れません。3. 電磁波エネルギーを外へ運ぶ光の速さ
2つの別々のことが起きています。電子は金属の中でごくわずかに動き、電子が生み出した波は遠ざかっていきます。縮尺は正確ではなく、波の片側のみを描いています。

波にも独自のタイミングがあります。波は変化から生まれるので、波が運ぶ場は電流の変化の速さで決まります。電流が最も速く変化するのは電子が反転する瞬間で、そのとき電流自体はゼロです。その影響が伝わるには時間がかかるため、離れた地点には遅れて届きます。つまり、電子の位置、電流、外へ出る場のピークはすべて同時ではありません。

電子の位置、電流、電波の場を同じ時間軸で示した図1周期にわたる3つのグラフ。電子が反転する瞬間、位置は端にあり、電流はゼロです。その瞬間に生じた場の最も強い部分は、離れた地点に少し遅れて届きます。電子の平均位置慣習上の電流電波の場(離れた地点で測定)伝搬の遅れここで電子が反転
3つの異なる量には、3つの異なるタイミングがあります。破線の位置では、電子全体のドリフトが端で一瞬止まり、電流はゼロで、電流の変化は最も速くなります。その瞬間に生じた最も強い場は、離れた地点に後から届きます。遅れの大きさは説明用で、距離とともに大きくなります。

アンテナの長さが重要なのはなぜか?

波長(λと書くことが多い)は、波が1周期の間に進む距離です。電波は非常に速いですが、868 MHzでは1周期がきわめて短いため、次の周期が始まるまでに波が進む距離は約345 mmしかありません。

次に、アンテナに沿って進む信号を想像してください。先端に達すると金属が終わるので、信号は反射して戻ってきます。適切な長さでは、進む波と反射した波が組み合わさり、アンテナに沿って強い繰り返しの電流パターンを作ります。ちょうどよいタイミングでブランコを押すようなもので、送信機からの新しい押しが、すでに起きている動きに加わります。これが共振であり、信号のタイミングとアンテナの長さがかみ合う必要がある理由です。

特によく使われる長さは2つあります。半波長アンテナは、先端から先端までが波長の半分です。1/4波長アンテナは、波長の4分の1の長さのエレメント1本で、グランドプレーンと組み合わせて動作します。

1波長と半波長・1/4波長アンテナの比較868 MHzでは、1波長は約345 mm、半波長ダイポールは約173 mm、1/4波長モノポールは約86 mmです。同じ縮尺で描いています。868 MHzの1波長1波長 ≈ 345 mm半波長ダイポール≈ 173 mm(86 mmのアーム2本)1/4波長モノポール≈ 86 mm+グランドプレーン
3つの長さはすべて同じ縮尺で描き、自由空間の値で計算しています。実際のアンテナは通常、数パーセント短く調整します。

考え方がわかれば、計算は簡単です。波長は光の速さを周波数で割った値なので、メートル単位の1/4波長はおよそ75をMHz単位の周波数で割った値になります。LoRaでよく使われる868 MHzでは約86 mm、915 MHzでは約82 mmです。

ダイポールアンテナ:協力して働く2本のアーム

ダイポールアンテナは、中央の信号源につながれた2本の導体のアームです。信号源は一方のアームへ電子を押し込みながら、もう一方から引き出し、その後これを反転させます。こうして電子はアームに沿って全体として同じ方向へ、一方へ、次に逆へと動き、電荷は繰り返し両端へ押しやられます。

一般的な半波長ダイポールでは、これが定在波と呼ばれる繰り返しのパターンに落ち着きます。

  • 電流は中央付近で最も強く、先端に向かってゼロに近づきます。電子は金属の端を越えて流れられないからです。
  • 電荷は両端付近にたまります。一方の先端がプラス、もう一方がマイナスになり、半周期ごとに入れ替わります。
半波長ダイポールの電流とドーナツ形の放射パターン中央給電の垂直ダイポール。電子がアームに沿って動き、電流は中央で最も強く先端でほぼゼロになり、先端に電荷がたまり、ドーナツ形の放射パターンを作ります。中央給電の半波長ダイポール電流は最大電流 ≈ 0先端に電荷がたまる放射パターン両端方向へはほとんど出ない横方向に最も強い
左:電子は中央付近で最もよく動き、先端ではほとんど動かず、両端に電荷がたまります。右:ドーナツ形の放射パターンを横から切った断面です。2つのローブをアンテナの周りに回転させると全体の形になります。動きは遅く、誇張して描いています。

その結果が、おなじみのドーナツ形の放射パターンです。ダイポールは横方向に最も強く放射し、両端の方向にはほとんど放射しません。

ダイポールが波を送り出す手順

電荷と電気力線を使うと、同じ過程を別の形でイメージできます。電気力線はプラスの電荷からマイナスの電荷へ向かうので、最初の半周期で線がどう変わるかを見てみましょう。

ダイポールが電波を送り出す4つのステップ中央給電のダイポールの4つの図。アームに電荷がたまり、電気力線がプラスからマイナスへ向かって外側に伸びます。最後の図では電子が戻り、閉じたループとして描かれた変化する場がさらに遠くまで広がっています。1. 開始2. 広がる3. ピーク4. 変化が外へ広がる
最初の半周期を簡略化した図です。プラスとマイナスの記号は電荷を、破線は各アームにたまった量を、オレンジの線は電界を、青い矢印は電子の動きを示します。電気力線は作図上の道具で、右側のみを示しています。
  1. 電荷が分かれ始めます。信号源が電子をアンテナの下方へ押します。上のアームにはプラスの電荷が残り、下のアームはマイナスの電荷を得ます。これは中央付近から始まり、短い電気力線がそれらをつなぎます。
  2. 場が広がります。電荷がアームに沿って広がるにつれ、電気力線も外側へ伸びます。場の変化は光の速さで伝わるので、遠くの空間にはまだ届いていません。
  3. 電荷がピークに達します。4分の1周期後、最も多くの電荷が先端付近にたまり、電子全体のドリフトが一瞬止まります。先ほど追った周期と同じく、電流はゼロです。
  4. 変化が外へ広がります。電子が向きを反転すると、アンテナの周りの電界と磁界が変化します。この変化は光の速さで外へ広がり、エネルギーを運び去ります。図の曲線は電界をイメージするためのもので、電線からちぎれて飛んでいく物理的なひもではありません。

次の半周期では電荷が逆向きにたまり、場の向きが逆になってパターンが繰り返されます。この電界と磁界の変化の繰り返しが外へ広がったものが電波です。

モノポールアンテナ:1本のエレメントとグランドプレーン

1/4波長モノポールは、波長の4分の1の長さの導体エレメント1本が、グランドプレーンと呼ばれる導体面と組み合わさって動作するアンテナです。信号はエレメントの根元とその面の間に給電します。名前とは裏腹に、グランドプレーンを大地に接続する必要はありません。

理想的な、平らで完全な導体のグランドプレーンを考えてみましょう。その表面の電荷がエレメントに応じて再配置され、面より上での効果は、面の下にアンテナの鏡像があるときとまったく同じになります。エレメント先端のプラス電荷には鏡像先端のマイナス電荷が対応し、鏡像の電流は対応する向きに流れます。エレメントと鏡像を合わせると、半波長ダイポールと同じ形になります。グランドプレーンが欠けた半分を電気的に補うのです。

グランドプレーン上の1/4波長モノポールとその鏡像平らなグランドプレーン上の垂直モノポール。その下の点線の鏡像が半波長ダイポールの形を完成させます。理想的な平面グランドプレーン実際のエレメント、≈ λ/4電線の電流鏡像(物理的には存在しない)給電点
理想的なグランドプレーン上では、モノポールとその鏡像を合わせると半波長ダイポールのように見えます。鏡像は結果を計算するための方法で、実際のアンテナではありません。この理想的な面では、電波のエネルギーは面より上の空間にのみ向かいます。

つまり、理想的な1/4波長モノポールの放射パターンは、ダイポールのドーナツの上半分と一致します。

もちろん、実際のグランドプレーンは無限ではありません。車の屋根、放射状の線材、回路基板などがその役割を果たせますが、面が小さかったり不規則だったりすると、同調が変わり、パターンが傾くことがあります。鏡像モデルは出発点であり、すべての機器を正確に表すものではありません。

ダイポールとモノポール:簡単な比較

同じ周波数での2つの設計を並べて示します。

半波長ダイポールと1/4波長モノポールの並列比較868 MHzで同じ縮尺で描いた半波長ダイポールと1/4波長モノポール。放射パターンはダイポールが完全なドーナツ、モノポールがドーナツの上半分です。半波長ダイポール1/4波長モノポール≈ 173 mm≈ 86 mm+グランドプレーン中央で給電根元で給電
周波数(868 MHz)も縮尺も同じです。オレンジの形は理想化した放射パターンです。
半波長ダイポールと1/4波長モノポールの比較
項目半波長ダイポール1/4波長モノポール
構造導体のアーム2本エレメント1本と導体面
一般的な長さ約λ/2(868 MHzで≈ 173 mm)約λ/4(868 MHzで≈ 86 mm)
給電点中央、アームの間根元、エレメントとグランドプレーンの間
グランドプレーン不要必要で、アンテナの一部
放射パターン完全なドーナツ形ドーナツの上半分(理想的な面)

どちらかが常に優れているわけではありません。通常は、使えるスペース、取り付け面、機器を何に取り付けるかで選びます。

補足の技術メモ:インピーダンスと利得

理想的な場合、半波長ダイポールの給電インピーダンスは約73 Ω、利得は約2.15 dBiです。無限に広い完全導体のグランドプレーン上の理想的な1/4波長モノポールは、インピーダンスがその約半分の約36 Ω、利得は約5.15 dBiです。同じ電力が空間の半分に向かうためです。実際の設置でのピーク利得は、形状、損失、放射パターンによって決まります。

アンテナが信号を受信する仕組み

ここで話全体を逆にしてみましょう。電磁波が受信アンテナに届くと、その電界が金属内の自由電子を押します。電界が交互に変わるにつれて電子は行き来し、アンテナの給電点に小さな交流電圧と電流を生みます。受信機はその信号を増幅して復号します。

到来した電波に反応する受信アンテナ進んできた電波が垂直の電線に届き、電線の中の電子が行き来して、受信機のグラフに小さな信号が現れます。電波が到来その電界が電子を押す受信機へごく小さな電気信号電線の中で電子が反応
受信は同じ話を逆にしたものです。到来した波が電線の中の電子を動かし、その動きが受信機の入力でごく小さな電圧になります。縮尺は正確ではありません。

相反性と呼ばれる性質により、アンテナの放射パターンと利得は、送信時と受信時で一般に同じです。両端方向への送信が弱いダイポールは、その方向からの受信も弱くなります。

実際の例:トラッカーのモノポール

Loko GPSトラッカーはモノポールアンテナを使っているので、ここまでの内容がそのまま当てはまります。パターンは先端方向で最も弱いため、アンテナを相手の無線機にまっすぐ向けるより、垂直に保つほうが通常は良い結果になります。動作には導体面が必要で、近くの金属や人や動物の体は同調を変えたりエネルギーを吸収したりすることがあります。電波の見通し線や信号の到達距離のガイドで説明しているように、アンテナの配置は無線リンクの一要素にすぎません。

参考資料

Loko GPSトラッカーの詳細